特別受益
特別受益
ご相談を受ける中で、「将来揉めるのが心配だから、今から自宅の土地・建物の名義を長男に変えておきたい、他にはあまり財産がないから」、あるいは、子供さんの方からそうしておいてもらいたいとの要望を聞くことがあります。そうしておけば揉める心配がなく安心だと・・。お気持ちはよくわかることですね。いわゆる生前贈与ということです。しかし、税金等の関係は置いておくとして、民法には共同相続人中に、被相続人から遺贈を受け、又は婚姻、養子縁組のため若しくは生計の資本として贈与を受けた者があるときは、その受益額を遺産の中に回復させ、その者の相続分を縮小させて共同相続人間の公平を図るという目的の「特別受益制度」という規定があります。遺贈や生前贈与を受けた相続人のことを「特別受益者」、この特別受益を遺産の中に回復させることを「特別受益の持戻し」といいます。上記のような例も、まさに特別受益にあたり、決して単なる生前贈与では揉める心配がなくなることにはならないのです。遺言書がなければ、この特別受益は遺産分割協議において考慮され、その生前贈与分は遺産の中に持ち戻されることになります。公平という観点からすれば、当然のこととも言えますね。もちろん他の相続人が納得してくれれば特別受益も問題はないことですが、はたしてどうでしょうか・・・。やはり、安心を得るためには様々な事情を考慮して総合的な対策を立てる必要があるのです。