遺産分割協議のやり直し

遺産分割協議のやり直し

「遺産分割をやり直したい。」時折あるご相談です。
相続人全員の合意により遺産分割協議書に署名・捺印がされれば、協議は成立し終了します。
一度成立した遺産分割協議は原則としてやり直すことはできません。簡単にやり直せたら、何度も蒸し返しが起こる可能性があり、法的安定性を害することにもつながってしまうので、当然のことと言えるでしょう。
私も遺産分割協議書作成時には、「協議はこれで終わり・蒸し返しはしない」というようなことを確約するための文言を必ず入れるようにしています。
ただし、下記のような遺産分割の無効・取消し事由等がある場合には協議をやり直すことが認められています。めったには無いことですが・・。
●相続人以外の者を加えて成立した遺産分割協議
●一部の相続人が参加せずに成立した遺産分割協議
●民法上の法律行為に意思表示の無効・取消し事由がある場合(例えば一部の相続人が財産を隠し、協議終了後に発覚、最初からその財産の存在を知っていたら、そのような分割で成立しなかったと考えられるような場合)
まあ、これらについては当たり前ですよね。無効であったり、取消される場合なのですから。(相続税の更生を行う場合、遺産分割協議無効確認の訴え、再分割についての調停や審判などの裁判手続きを経ておく必要があるようです。)
そして、上記のような無効・取消し事由がない場合であっても、一度成立した遺産分割協議を解除してやり直すことが可能なケースがあります。
法律行為の解除には「債務不履行解除」と「合意解除」というものがあり、遺産分割協議の場合には債務不履行解除は認められていません。しかし、相続人全員の合意によって解除することは可能であるとされているのです。
「共同相続人は、既に成立している遺産分割協議につき、その全部又は一部を全員の合意により解除した上、改めて分割協議を成立させることができる。」という最高裁判例が出ており、例えば最初の遺産分割協議において不動産の相続登記を済ませてしまった場合でも、これを一旦抹消して再分割後に新たな相続人に登記することも可能というわけです。但し、ここで大きな注意点があります。税務上の問題です。相続税法基本通達には以下の規定があります。「当初の分割により共同相続人に分属した財産を分割のやり直しとして再配分した場合には、その再配分により取得した財産は遺産分割により取得したものとはならない」とあり、つまり税務上では遺産分割ではなく贈与・交換・売買などが原因で取得したものと取り扱われ、贈与税や譲渡所得税が発生することになってしまうのです。贈与税の税率はご存知のように高いです。ですから、やむを得ない理由がある場合に、全員の合意があれば民法上や登記上では最初の遺産分割協議を解除し、やり直しすることは一応可能となっていますが、大きな税務上の問題があり実際には余程のことがない限り避けるべきことです。その意味でも遺産分割協議はやり直しの問題など起きないよう、くれぐれも慎重に行うことが大切なのです。

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